勇気ある撤退

牛ではないですが、赤く染まった景色にはちょっと興奮してしまいます。

朝陽または夕陽に照らされる樹氷や山々が染まりゆく数分間は雪山ならではの美しさに出会えるひとときで、そんな光景を目の当たりすれば感動と喜びを味わうことができるからです。

朝陽射す槍穂高(2月8日撮影) Photo by Kenji Shimadate

朝陽射す槍穂高(2月8日撮影)

そんな光景を求めて当ヒュッテへ宿泊される方が多いのですが強風と寒さが想像していたよりも厳しく、山頂に立ったものの日の出や日没まで耐えられなくなってしまい下山せざるを得なくなる方もいらっしゃいます。

少しもったいないような気もしますが、体の限界を感じて見たいという欲望を抑えて下山することは賢明な判断で勇気ある撤退と言えるのです。

私は欲望を抑えることがやや苦手で、体が悲鳴を上げているにもかかわらず良い写真を撮りたいばかりに無理をしてしまい、軽度の凍傷ではあったものの指先に何回もダメージを負わせてしまったため今ではちょっとした寒さで指先が痛くなってしまう体になってしまいました。

欲を抑えられなかった者からの教訓ですが、指先が痛くなり始めたり足がガタガタ震え始めたら山小屋に撤退する合図と考えられた方が無難です。

寒さに耐えられなかったことは次の機会に生かせるので、寒さ体験が糧となったと考えていただければ幸いと思います。

ただし、これは山小屋を拠点とした概ね1時間程度の行動に対しての考え方で、朝夕の時間帯に耐えられないということはビバーグを余儀なくされた場合に命の危険が高いということになるのです。

夕景を楽しむひととき(2月8日撮影) Photo by Kenji Shimadate

夕景を楽しむひととき(2月8日撮影)

北横岳は冬山初心者向けの山と紹介されることがありますが、これは経験者が初心者を連れて行くのに適した山ということで、初心者だけで安全な登山ができる可能性は低いということになります。

勇気ある撤退とは欲を抑えて断念するという意味でもありますが、この判断を下すことは初心者だけでは難しいものとなるため信頼のおける経験者の同行が必要となるのです。

経験を積み重ねて難しい山へとステップアップしていくのが登山の基本であり、慎重なスッテプアップであれば今までの経験を生かして厳しい条件下でも的確な判断が下せるようになってくるものです。

不運にも滑落後に凍死してしまった遭難事故から間もなく1年が経ちます。

くれぐれも能力と装備に見合った登山を心がけていただき、初心者向けの山だからと気を抜かずに入山されますようお願いいたします。

※雪の重さで折れ曲がった木が登山道をふさいでいる場合があります。ルート等を見失わないようにご注意ください。

※寒暖の差がありますが、装備等は必ず寒い方に対応できるものをご用意ください。逆に気温が異常に高い時は濡れ対策が必要です。

※登山道は溝状となっているので、次の雪が降ったり強風が吹くだけで埋まってしまいルートが不明瞭となることもあります。

※スノーシューで登山道を外れて楽しまれる方は植生を傷めないようにご注意ください。特に坪庭や北横岳は自然環境の特別保護地区に指定されているので、著しい植生破壊は罰金または禁固刑に処されることもあります。

※アイゼンやスノーシューの脱着は必ず屋外で行い、装着したままで建物内へ踏み入ることのないようにしてください。

【山のようす 2月9日現在】

ヒュッテのある標高2400mの最近の気温は、最低が-20℃~-13℃、最高は-14℃~-8℃です。

今週末は気温が異常に高くなる予報が出ているので、濡れ対策が必要になるかもしれません。また、樹氷が崩れ落ちてくることもあるので頭上への注意が必要となります。

ヒュッテ付近の積雪量は70㎝程度です。吹き溜まりには1m以上の積雪があります。

山の最新情報や装備についての問い合わせは現地電話(090-3140-9702)へお尋ねください。

【予約状況 2月9日現在】

2月11、27日はほぼ満室となりました。

2月4、22日、3月15日、4月4~22日は都合により閉館いたします。

尚、宿泊予約の無い日は閉館しているのでご注意ください。

定員制と予約人数に合わせて食材を背負い上げているので宿泊される方は必ず予約してからお越しください。

当ヒュッテは定員制です。相部屋が基本で個室ではありません。満室時の就寝スペースは一人一畳となります。

現在の食事の時間は夕食が17時30頃~19時終了、朝食は6時30分~7時30分終了となります。

朝陽や夕陽の時間帯に食事時間が重なるので、朝夕にじっくりと写真撮影をされたい方には素泊まりをおすすめします。

宿泊予約されている方は遅くとも16時までに到着してください。

お弁当はできません。

また宿泊にあたっては、こちらのページもお読みください。
https://kitayoko.com/information

【登山の注意点】

昨冬の八ヶ岳ではお尻で滑り降りて足を骨折する事例が2件発生し、いずれも救助隊に救出されるという遭難事故がありました。登山道を意図的に滑り降りると登下降のためのステップを潰して尚且つ雪面を硬くしてしまいます。滑り降りて楽しいのは本人だけで多くの人にすれば迷惑行為です。他人への衝突の危険もあるので、登山道を滑り降りることはご遠慮願います。

アイゼン等の滑り止めを必ずご用意ください。大雪の後はカンジキやスノーシューが有効です。

三ツ岳や大岳付近はペンキ印を頼りにするルートです。積雪時の行動は慎重にお願いします。

北横岳以北へ向かう方はカンジキやスノーシュー、テント等を必ず持っていただき、力量のある方以外は向かわないようにしてください。

14時以降は急激に気温が低下します。早着を心がけるようにしてください。

北横岳が活火山であることに留意されますようお願いいたします。尚、北横岳には噴火に備えてのシェルターやヘルメット等の配備はありません。

山の状況に対して装備不足と思える登山者が目に付きます。特に初心者を連れて来られる方は、必ず装備や力量の確認をしてから入山してください。

疲労や道標の見落とし等により、行程計画に対し大幅に遅れてしまうことがあります。最終目的地には15時までに到着できるような計画であることや、トラブル等へ対処するための予備時間を行程計画に入れ込むことをすすめます。

日帰り登山の方でも登山で必要な最低限の装備を必ず携行してください。(装備不足は命が危険に晒されることになります)

万が一の時に備えての装備だけでなく、経験や知識等が必要となるので初心者だけでの登山は控えるようにお願いします。

個人個人の登山能力や装備等が山の状況にそぐわない場合や体調が優れない時などは、登山計画の変更あるいは中止するなど柔軟に対応してください。

緊急時を除き、指定地にテントを張るのがルールです。指定地以外での幕営は植生破壊となる場合があります。

【お知らせ】

当ヒュッテは昼食の提供をしておりません。また不定休となっているので休憩利用ができないことがあるのでご注意ください。

麦草峠付近と大河原峠付近の車道は冬季閉鎖となっています。

北横岳以北の山小屋は小屋閉めしました。

2月20、21日に北八ヶ岳ロープウェイ周辺で山と溪谷社主催の「北八ヶ岳スノーフェスティバル」が開催されます。雪山初心者向けのイベントを中心にたくさんのプログラムが用意され、安全のための知識と技術を雪の上で楽しみながら学べるチャンスです。

詳しくはこちらをご覧ください。
http://ymm.yamakei.co.jp/snowfes/about.html

【北八ヶ岳・北横岳ヒュッテ】

営業/通年(要予約、予約のない日は休館となります)

夏期料金(6月〜9月)
1泊2食付き 8000円
1泊夕食付き 6900円
素泊まり 4800円

春季・秋季料金(4月、5月、10月、11月)
夏期料金に対して400円増しとなります。

冬季料金(12月〜3月)
夏期料金に対して800円増しとなります。

収容/30人

ご予約・お問い合わせ
391-0002
長野県茅野市塚原2-17-26
島立健二
予約 090-7710-2889
現地 090-3140-9702