理解と実行
阿弥陀岳の遭難の陰に隠れた感じでしたが、登山道を下山中にお尻で滑り降りた人が雪にアイゼンが刺さった拍子に足を骨折して救助隊に救助されるという事故が八ヶ岳で起きていました。
ここ北横岳でもアイゼンを装着したままヒップソリで登山道を滑り降りる人やスノーシューで上手に急斜面を下れない人がお尻で滑り降りてくる光景をよく目にします。
長らく登山道にできているステップを故意に潰すことは悪しき行為とされてきたのですが、最近は登山用品店でもこの手のソリを販売しているので登山道を滑り降りるという行為が悪いことと思わなくなっていてもしょうがないのかもしれません。ただ今回は、滑らないようにとアイゼンを装着しながら、わざわざ滑り落ちるという矛盾行為をして救助された訳です。
矛盾する行為として似たようなことがもう1点あります。それは登山道を外れてスノーシューを楽しむ行為です。登山道の目印を探しながら慎重に歩かなければならない雪山においてはやはり矛盾するものと思えます。スノーシューの醍醐味は登山道を外れて森の中を散策できるところにあると理解はしていますが、それはあくまでも地形図やコンパスを使い「地図読み」に熟達した人たちにのみ許される遊びなのです。
とは言えGPSを使えばもっと確実に自分の位置を確認できるので地図読みに長けていなくても目的地に向かうことは可能となるのですが、登山道から外れてしまうことには落とし穴があるのです。
北八ヶ岳で最も注意しなければならないのは雪で埋もれた幼木の密生地へ立ち入ることです。このような場所は正真正銘の落とし穴で、落ち込むと脱出困難となり、これを繰り返すと体力をひどく消耗してしまうのです。30年前にもなりますが、当ヒュッテに宿泊した単独の方が幼木帯に落ち込んだ状態で命を落としてしまったという苦い経験があります。
見つけ出すまでにもかなりの日数を要したと記憶していますが、発見が遅れてしまったことは登山道から大きく外れた場所だったためです。
古い話をここへ取り上げたのには理由があります。それは例年3月に迎えるの最大積雪期の積雪量を現時点で超えてしまい、登山道以外でも踏み入って行けそうな状態になっているためです。
このところ日帰り登山者の多くがあまりにも軽装で危険に対して無防備に見えることも理由ではありますが、登山道を外れたスノーシューの踏み跡がかなり奥の方まで続いていたり、本来のルートではないところにつけられたトレースを間違っていると気付かずに多くの人が歩いているからでもあります。
登山道を示す目印が無くてもトレースがあれば大丈夫と思うのは大間違いで、各自が自分の位置を確認しながら歩けることが雪山では最重要となります。
今私が最も危惧していることは、晴天時に経験や装備不足の人が登山道を大きく外れて森の中へ入り込んだ後に天候が劇的に急変してしまうことです。晴れから10分で猛吹雪となったり烈風が吹き荒れれば5分前の踏み跡も消えてしまうので、来た道を引き返すこともできずに遭難する可能性が高くなるのです。
天候急変での遭難は同時多発的に起きる傾向があるため、運よく携帯電話で救助要請ができたとしても一度に多くの救助隊を組織することが難しく、さらに登山道以外にいる人を探すのには非常に時間がかかってしまいます。そのため、その日の内に助け出される可能性は低くなり、ビバーグできる装備や能力がなければ北八ヶ岳の極寒の寒さに死を覚悟しなければならなくなるのです。
命を落としかねない場所に行くという覚悟で山へ望んでいただければ、自ずと装備が充実し行動も制限されるものです。入門コースとして紹介される北横岳ではありますが、ちょっとしたミスが命取りとなるということを念頭に万全な体制でお越しください。
一部の方だと思いますが注意書きを理解できない方がいらっしゃり、当ヒュッテの外トイレを使用する際はアイゼン等を外すようにとのお願い書きを掲示しているにもかかわらず守れない方がいます。
そのような方は雪山の危険を示す注意書きも理解できないのでしょうか?
注意書きを理解できなかったり、理解しながらそれを実行できないようであるならば雪山登山はご遠慮していただいたほうが無難です。
地元には優秀な救助隊員が揃っていますが、先週始めは阿弥陀岳での捜索とお尻で滑って骨折した人の救出に3日間、今週の初めには天狗岳で雪庇を踏み抜いた方の救出活動にも2日間を費やしています。警察署から山岳救助隊員が出動すれば通常の勤務体制に欠員が出ることになり、民間の救助隊員も仕事を欠勤してまで捜索や救出活動にあたっているので、雪山の危険を知らないことで起きる遭難は迷惑にしかならない社会悪となる場合があります。
それでも、どんな理由であっても救助要請があれば山岳救助隊員は出動し、超人的な活躍を果たします。ただし、どんなに優秀な救助隊員でも死んでしまった人を助けることは不可能となるので、せめて命を繋ぎ止めるために必要な準備と努力だけは怠らないようお願いします。
※北八ヶ岳全域で登山道を示す赤テープ等の目印や道標等が多くの場所で雪に埋もれています。
※スノーシューの踏み跡を辿ると坪庭内の北横岳分岐点を通らない場合があるので、必ず目印のポールに沿って歩行してください。
※初心者だけでの入山は危険です。必ず信頼のおける経験者に同行してもらってください。
※周遊登山よりも引き返しやすい往復登山をお勧めします。
※倒木が多くなっています。通過の際には注意してください。
※経験や装備不足の方は決して無理をしないようにお願いします。
※スノーシューは植生を傷めないようにお楽しみください。著しい植生破壊は罰せられます。
※登山道以外につけられたスノーシューの踏みあとに迷い込まないように注意してください。
※登山道を滑り降りるのは衝突事故の恐れやステップを崩すことにもなる迷惑行為です。
【山のようす 2月17日現在】
ヒュッテのある標高2400mの最近の気温は、最低が-21℃~-4℃、最高は-15℃~-2℃です。
強風が吹き荒れる日もあるので体感温度はもっと下がります。防寒着等は必ず寒い方へ対応できるものをご用意ください。
積雪は平均2m以上で吹き溜まりには4m以上あります。例年3月の最大積雪量よりも多いとお考えください。(今後の降雪にもよりますが4月まで積雪が増え続ける可能性があります)
北横岳以北はルート示す目印が少なく雪も多いので、カンジキやスノーシュー、テントを持った力量のある方以外は向かわないようにしてください。
三ッ岳~雨池峠までのトレースは期待できません。三ッ岳Ⅱ峰からⅠ峰までが不明瞭で、雨池山には倒木が多くあります。
縞枯山や茶臼山方面も目印や道標が埋もれ不明瞭な箇所があるようです。
アイゼン等の滑り止めを必ずご用意ください。カンジキやスノーシューは状況により有効です。状況により使い分けられることをお勧めします。
山の状況に対して装備不足と思える登山者が目に付きます。特に初心者を連れて来られる方は、必ず装備や力量の確認をしてから入山してください。
疲労や道標の見落とし等により、行程計画に対し大幅に遅れてしまっている登山者を見かけます。最終目的地には15時までに到着できるような計画であることや、トラブル等へ対処するための予備時間を行程計画に入れ込むことをすすめます。
日帰り登山の方でもヘッドランプは必ず携行してください。
緊急時を除き、指定地にテントを張るのがルールです。指定地以外での幕営は植生破壊となる場合があります。
万が一の時に備えての装備だけでなく、経験や知識等が必要となるので初心者だけでの登山は控えるようにお願いします。
個人個人の登山能力や装備等が山の状況にそぐわない場合や体調が優れない時などは、登山計画の変更あるいは中止するなど柔軟に対応してください。
山の最新情報や装備についての問い合わせは現地電話(090-3140-9702)へお尋ねください。
【予約状況 2月17日現在】
2月21日は満室となりました。
2月24、25、26日、3月4、5、16日は都合により宿泊予約をお受けできません。
(上記以外の日でも宿泊予約の入っていない日に用事を入れてしまうことがあります)
尚、宿泊予約の無い日は閉館しているのでご注意ください。
定員制と予約人数に合わせて食材を背負い上げているので宿泊される方は必ず予約してからお越しください。
当ヒュッテは定員制です。相部屋利用が基本で個室ではありません。満室時の就寝スペースは一人一畳となります。
現在の食事の時間は夕食が17時30頃~19時終了、朝食は7時~8時終了です。(3月より朝食は6時30分~7時30分終了となります)
また宿泊にあたっては、こちらのページもお読みください。
https://kitayoko.com/information
【お知らせ】
ピラタス蓼科ロープウェイの名称は「北八ヶ岳ロープウェイ」に変更となりました。
ロープウェイから茅野駅行きのバス便の最終時間に気をつけてください。繁盛期を除き15時5分が最終便となります。
【北八ヶ岳・北横岳ヒュッテ】
営業/通年(要予約、予約のない日は休館となります)
夏期料金(6月〜9月)
1泊2食付き 8000円
1泊夕食付き 6900円
素泊まり 4800円
春季・秋季料金(4月、5月、10月、11月)
夏期料金に対して400円増しとなります。
冬季料金(12月〜3月)
夏期料金に対して800円増しとなります。
収容/40人
ご予約・お問い合わせ
391-0002
長野県茅野市塚原2-17-26
島立健二
予約 090-7710-2889
現地 090-3140-9702